恋は理屈じゃない

「そんなこと言われても仕事だもん、仕方ないじゃない」

「だから別れてほしいって言ってんだよ」

お互いの都合が合わなくても、気持ちだけは通じ合っていると思っていた。でも、いつの間にか圭太の心が離れていたことにようやく気づく。

「圭太、私のこと嫌いになった?」

「……嫌いじゃないけど」

「だったら、別れるなんて言わないで。お願い……」

私は今でも、圭太のことが好き……。

堪え切れない感情が、瞳から涙と共にあふれ出てしまった。眉尻を下げた圭太の困った表情が、涙で揺らめく先に見える。

「こんなところで泣くなよ。目立つだろ」

「……ごめん」

ここは駅前のコーヒーショップ。周りの視線が気になるのは当然だ。けれど込み上げてくる涙を堪えることは、どうしてもできなかった。

「鞠花、俺たちとりあえず一度距離を置こう。な?」

圭太の提案を受け入れたくない。でも、これ以上ワガママを言ったら、圭太に嫌われちゃう……。

「……うん。わかった」

涙ながらに仕方なく返事をした。すると圭太がイスから立ち上がる。

「じゃあ、今日はこれで」

「あっ、圭太……」

圭太は私の引き留める声を最後まで聞かないまま、足早にコーヒーショップから出て行ってしまった。取り残された私は止まらない涙を隠すために、ひとりうつむく。

圭太のバカ……。

面と向かって言えない言葉を心の中で呟いてみても、余計虚しくなるだけだった。

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