恋は理屈じゃない

嘘つき彼氏


圭太と距離を置くと決めた週末の日曜日。すべての結婚披露宴が終わると、会場の後片づけに取りかかった。

忙しく身体を動かしていれば、圭太のことは思い出さなくて済む。でも着替えを済ませて更衣室から出ると、圭太との楽しかった思い出が頭の中に次々とよみがえってしまった。

高校に入学して同じクラスになった圭太と付き合うことになったのは、文化祭の実行委員になったことがきっかけ。徐々に仲がよくなり、気づいた時にはリーダーシップを発揮する圭太のことが好きになっていた。

文化祭の打ち上げで圭太から付き合ってほしいと告白された私は、すぐにOKの返事をした。クリスマスイヴに初めてキスを交わし、高校二年生の夏休みに圭太に初めてを捧げた。

高校を卒業すると圭太は大学に、私は専門学校に進学した。でも休日は必ず会っていたし、ふたりで旅行にも行った。

やっぱり休みが合わないと、うまくいかないのかな……。

不安ばかりが大きく膨れ上がった私の口から、大きなため息がこぼれ落ちた。その時、通用口の手前で不意に声をかけられる。

「ため息なんかついて、どうした?」

振り返った先にいたのは、速水副社長だった。

「べ、別にどうもしていませんよ」

圭太と別れの危機にあることを、速水副社長に打ち明ける気などない。

ため息をついたことを咄嗟に誤魔化した。すると、速水副社長の口もとがニヤリと上がる。

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