恋は理屈じゃない
ダメだ。薬飲もう。
二度寝をあきらめるとベッドから起き上がり、部屋を出る。階段を下りてリビングに向かうと、救急箱から痛み止めの薬を取り出した。
「鞠花ちゃん、おはよう」
「おはよう」
午後出社のお姉ちゃんに声をかけられる。
「あら、頭痛いの? もしかして二日酔い?」
「うん。そうみたい」
苦笑いを浮かべながらキッチンに向かうと、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してグラスに注いだ。
「昨日の夜、鞠花ちゃんが酔っ払って、速水さんにお姫様抱っこされて帰ってきた時は驚いたわ」
「えっ? お姫様抱っこ?」
たしかにお酒を飲み過ぎたのは覚えている。けれど、どうやって家に帰ってきたのかは記憶になかった。
「ええ、そうよ。酔っ払って寝ちゃった鞠花ちゃんを、速水さんが部屋まで運んでくれたんだから」
お姉ちゃんは楽しそうにクスクスと笑いながら、昨日の出来事を教えてくれた。
ああ、そうか。あの心地よい揺れは、速水副社長のお姫様抱っこだったんだ……。私、重くなかったかな?
変なことを気にしていると、あることにハッと気づく。