恋は理屈じゃない
「お姉ちゃん、副社長からなにか聞いた?」
「ええ、聞いたわよ」
圭太のことは、お姉ちゃんには言わないって約束したのに……。
速水副社長を簡単に信じてしまったことを後悔した。でも……。
「鞠花ちゃんとバッタリ会って、お腹が空いていたみたいだから料亭に連れて行った、って速水さんから聞いたわ」
予想していなかった展開に驚く。
「それから?」
「それから……鞠花ちゃんにお酒を飲ませすぎたって謝っていたわ」
強くもないお酒を勧められて断らなかった自分も悪かった、と反省をする。
「ほかには?」
「ほかには……今度、その料亭に私を連れて行ってくれるって……」
この話は、私には関係ない。
「あ、そう」
どうやらお姉ちゃんは、圭太が私と別れたがっていることをまだ知らないみたい。
「鞠花ちゃん。今度速水さんに会ったら、昨日のお礼を言ってね」
「うん。わかった」
速水副社長、約束を守ってくれたんだ……。
その事実をうれしく思いながら、痛み止めの薬を飲んだ。