恋は理屈じゃない
LOVE*3
いってらっしゃい
ブライダルフラワーコーディネーターである私の仕事は、結婚披露宴会場の装花作業がメイン。だからといって、結婚披露宴が行われない日がオフというわけではない。
花の発注と仕入れに管理。そのほかにも、新郎新婦とウエディングプランナーさんとの打ち合わせやブーケの作成など、土日と祝日以外にこなさなければならない仕事はたくさんある。そんな慌ただしい平日が過ぎた土曜日の午前。
装花作業を終わらせて二階の結婚披露宴会場を出ると、一階のロビーを足早に横切る速水副社長の姿を見つけた。
「副社長!」
私の呼びかけに気づいた速水副社長の足が止まる。一階に続く螺旋階段を急いで駆け降りると、料亭でのお詫びとお礼を兼ねて、頭を下げた。
「この前はご迷惑をおかけしてすみませんでした。それから、ごちそうさまでした」
「ああ、いや。俺の方こそ飲ませすぎたみたいだ。悪かったな」
「いいえ。あの……私、重くなかったですか?」
ずっと気になっていたことを思い切って尋ねてみた。すると、速水副社長の眉間にシワが寄る。
「ああ、実は次の日、腕が筋肉痛になった」
「嘘っ!」
「本当だ。少しダイエットした方がいいかもな」
速水副社長の口角が、意地悪くニヤリと上がった。