恋は理屈じゃない
イイオンナになってやる
圭太と別れた翌日の木曜日。仕事を終わらせると高校時代の友人である米山琴美(よねやま ことみ)と食事をするために、予約したイタリアンレストランに向かった。
大手都市銀行に就職して、窓口業務に携わっている琴美とは休みが合わない。だから平日の夜に食事をしながら、近況を報告し合うのがお決まりになっている。
約束をした時間を五分過ぎてしまい、焦りながら階段を上がるとイタリアンレストランのドアを開ける。すると奥の席から顔をのぞかせた琴美が、私に向かって手を軽くあげた。
「鞠花!」
「琴美! ごめんね。待った?」
「ううん。大丈夫だよ」
ワインボトルが並ぶカウンターの前を通り、窓際のテーブル席に腰を下ろす。グラスワインと熟成生ハムのサラダを頼むと、早速話が始まった。
「鞠花、圭太とはどう?」
高校に入学して仲良くなった琴美は、もちろん私と圭太の仲を知っている。向かい合ってからまだ五分も経っていないのに、一番聞かれたくなかった話題になってしまい苦笑した。
「実はね、圭太と別れたの」
「えっ! どうして?」
猫のような丸い目をさらに大きく見開いた琴美が、驚きの声をあげる。