恋は理屈じゃない

「へえ、そうなんだ。それでその人って、自分でイイオトコって言っちゃうくらい、本当にイイオトコなわけ?」

「えっ? まあ、たしかにイケメンかな」

二重の凛々しい瞳とスッと通った鼻筋、形のいい少し厚めの唇がバランスよく配置された速水副社長の顔を頭に思い浮かべる。

「鞠花、もしかしてそのイケメンに恋しちゃっているんじゃないの?」

「ああ、それはない。だってその人ってお姉ちゃんの彼氏だもん」

お姉ちゃんには付き合っている彼氏がいることを、琴美はすでに知っている。

「え~、そうなんだ。つまんないの」

「つまんないって……」

テーブルに頬杖をついて不満げな表情を浮かべる琴美の反応をおもしろく思いながら、仔羊のローストとペスカトーレを追加オーダーした。

「琴美は、彼氏できた?」

ストレートの黒髪にキラキラと光る瞳、キメの整った肌にぷっくりした唇。美人で大人びている琴美に彼氏ができないのは、彼女の理想が高いから。

「ううん。全然。銀行員って真面目しか取り柄がない男ばっかりでつまんないし。あ、そうだ。来月の金曜日に合コンあるけど、鞠花も参加しない?」

< 41 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop