恋は理屈じゃない
LOVE*5
お仕置きが必要か?
息つく暇もないほど忙しかった連休中はミスなどしなかったのに……。
「鞠花さん、そこの花はバラじゃなくて百合ですよ」
「えっ? あっ、ごめんなさい」
スタッフの杉山さんに注意され、慌てて作業をやり直す。
ダメだ。今は仕事中。集中しなくちゃ……。
そう思っても、お姉ちゃんのことを考えるだけで無意識のうちに口からため息がこぼれてしまう。
それでもなんとか一日の仕事を終わらせると、更衣室で着替えを済ませて通用口に向かった。すると背後からカツカツという足音と共に、私の名を呼ぶ声が聞こえる。
「鞠花ちゃん」
振り返った先には、お姉ちゃんを家まで送り届けた日の夜と同じように口もとだけを上げて無理して微笑む速水副社長の姿があった。
速水副社長の心情を思うと、胸が苦しい……。
「このたびは姉が……本当にすみませんでした」
速水副社長に頭を下げる。
「……蘭から聞いたのか?」
「はい」
頭を上げると、笑みが消えた速水副社長と視線が合った。
「そうか……それで蘭の様子はどうだ?」
速水副社長が私を訪ねて来たのは、お姉ちゃんの具合を聞くため……。
別れたのに、まだ彼に愛されているお姉ちゃんを憎らしいと思ってしまった。