恋は理屈じゃない
速水副社長の役に立ちたい気持ちと、無理だという気持ちが心の中で葛藤する。返事に困っていると彼が頭を上げた。
「須藤さん、提案がある」
「提案?」
首を傾げる私に向かって、速水副社長が大きくうなずく。
「俺が新郎役をしたら花嫁になることを引き受けてくれるか?」
「えっ? 副社長が?」
まさかの展開になり、驚く。
「俺が須藤さんの隣で細かい指示を出す。それなら安心だろ?」
「ま、まあ、そうですけど……」
口ごもりながら答えると、速水副社長の口もとがニヤリと上がった。
「よし、交渉成立だ。それでは準備を頼む」
速水副社長は意気揚々と、女性スタッフに指示を出す。
「はい」
女性スタッフの返事を聞いた速水副社長はひとりひとりと視線を合わせると、最後に私を見つめた。
「須藤さん、うちのスタッフはみな優秀だ。安心して身を任せてくれ」
「は、はい」
速水副社長の真っ直ぐな瞳と力強い言葉は、スタッフを心から信頼している証拠。
「それじゃあ、また後で会おう」
「はい」
速水副社長は最後に爽やかな笑みを浮かべると、ブライズルームから出て行ってしまった。パタンと扉が閉まると、四人の女性スタッフの人たちが角砂糖に群がるアリのように私の周りに集まり始める。
「お嬢様、失礼いたします」
「えっ? あ、キャッ!」
私に向かってあらゆる方向から八本の手が伸びてくる。抵抗する間もなく、制服の白いシャツを脱がされてしまった。その間にも黒いパンツの前ボタンが外され、ファスナーがジジジッと下ろされた。