恋は理屈じゃない
ただ闇雲に、カマをかけたわけじゃなかったんだ……。
速水副社長の鋭い思考に感服する。
「あの、私は産まれてくる赤ちゃんのことを考えたら、お姉ちゃんと笠原さんが結婚するのが一番いいと思っています。でも肝心の笠原さんと連絡が取れなくて……」
一番の問題点をあげると、ため息をつく。
「もしかして笠原が辞表を出したことを知らないのか?」
「えっ、辞表?」
「ああ。笠原の奴、俺になにも言わずに辞表だけ置いて姿を消したんだ。電話も繋がらないし、マンションを訪ねてもすでに引っ越した後だった」
「そうだったんですか」
「ああ」
笠原さんの行方がわからないのは、私たちだけじゃない……。
焦った私はマティーニに口をつけた速水副社長に、すがった。
「あの、こんなことを副社長にお願いするのは筋違いだと思うんですけど、もし笠原さんの行方がわかったら私に教えてくれませんか?」
頼れる人は速水副社長しかいない。切羽詰まった思いから、図々しいお願いをしてしまった。すると彼の眉間にシワが寄る。
「笠原に会って説得をして、ふたりを結婚させるつもりか?」
「はい。そのつもりです」
速水副社長は大きなため息をつくと、マティーニをあおった。