恋は理屈じゃない
あっという間に下着姿になってしまった私の身体を、八つの瞳がじっと見つめる。
やだ、恥ずかしい……。
食い入るような視線から逃れるために両手で胸もとを隠すと、女性スタッフのひとりが声をあげた。
「大丈夫そうね」
「ええ」
女性スタッフ、全員がうなずく。
いったい、なにが大丈夫なの?
女性同士とはいえ、ひとりだけ下着姿にさせられて不安ばかりが募っていった。そんな中、視線をキョロキョロと泳がせていると、肩の上にガウンが乗った。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
素肌を隠すように、急いでガウンを羽織る。
「お嬢様、サイズも大丈夫なようですので、今日はあちらのドレスをお召しになっていただきます」
「は、はい」
『大丈夫』って、ウエディングドレスのサイズのことだったんだ……。
女性スタッフの視線の先を追えば、ディスプレイボディに飾られたオフショルダーのウエディングドレスが目に留まった。
ブライダルフラワーコーディネーターという仕事柄、ウエディングドレス姿の花嫁を目にする機会は多い。けれど速水副社長に言った通り、ウエディングドレスを着るのは今日が初めて。
あんなに素敵なドレスを着られるなんて、うれしいな……。