恋は理屈じゃない
私を襲う気ですかっ!
物音が聞こえて目が覚める。
たしか今日は月曜日のはず。安眠を妨害するのは誰よ……。
重い瞼を開けると、見慣れない天井が目に飛び込んできた。
ここは、どこ?
いつも通り自分の部屋で目が覚めたと思っていた私は、辺りを確認するためにムクリと身体を起した。すると、まさかの人物と視線が合う。
「鞠花ちゃん、おはよう」
えっ? どうして速水副社長が?
爽やかに挨拶をする彼を見つめながら、必死に記憶をたどる。
ああ、そうだ。昨日は速水副社長と東京プラチナガーデンのバーでカクテルを飲んだんだ。
昨夜の出来事を、ようやく思い出す。
お姉ちゃんと別れて辛そうな速水副社長をひとりにすることができなくて寄り添っていたけれど、いつの間にか寝ちゃったんだ……。
一夜を共に過ごしてしまったことを恥ずかしく思いつつ、速水副社長に向き合うと挨拶をしようとした。でも……。
「おはようございま……キャー!!」
途中で大きな悲鳴をあげてしまったのは、速水副社長が上半身を露わにしていたから。
「朝からうるさいな」
速水副社長は片目を閉じると顔を歪ませる。
「だって、副社長のその格好! 私を襲う気ですかっ!」
腰にバスタオルを巻いただけの速水副社長の姿に身の危険を感じた私は、シーツを手繰り寄せると身体を隠す。そして、威嚇するように彼を睨みつけた。