恋は理屈じゃない
すべてを速水副社長に、打ち明けた方がいいのかな? でも泣いたなんて言ったら、困惑するよね……。
どうしたらいいのか悩んでいると、速水副社長に顔を覗き込まれる。答えを催促された私は、仕方なく口を開いた。
「ふ、副社長……すごく酔っていたから家まで付き添ったんです。そしてベッドまで副社長を連れてきて……なんだか疲れちゃって……気がついたら朝でした。すみません」
近すぎる距離にドキドキと胸を高ぶらせながら、昨日の出来事を大まかに説明する。
「そうか……。俺の方こそ迷惑をかけてすまなかった。外泊させてしまった理由は俺からご両親にきちんと説明する」
速水副社長はワイシャツの襟を立てると、手にしていたブルーのストライプネクタイを首に回した。
私を気遣ってくれるのはありがたいけれど、お姉ちゃんの元カレである速水副社長と一夜を過ごしたなんて、家族に絶対知られたくない。
「そ、そんなことしなくていいですから! なんだか余計ややこしいことになりそうだし……」
「……それもそうか」
慌てて断ると、速水副社長が小さく笑った。
彼はネクタイを結び終えると、スーツの上着を羽織る。
「副社長、もしかしてこれからお仕事ですか?」
「ああ、出張なんだ。今回は今日から二週間の予定だ。これからタクシーで東京駅に向かう」
「……そうですか」
速水副社長と、しばらく会えないんだ……。
急激な寂しさに見舞われる。