恋は理屈じゃない
LOVE*6
意外とS?
速水副社長が出張に行ってから、一度も連絡はない。仕事が忙しいのはわかっているけれど、やはり声を聞きたいと思ってしまう。
どうしてこんなに速水副社長のことが気になるんだろう……。
モヤモヤしながらベッドに横になっていると、スマートフォンが鳴り響いた。画面に表示されたのは、待ちに待った速水副社長の名前だ。
「もしもし」
「俺だ。今大丈夫か?」
「はい!」
久しぶりに声を聞き、心が躍る。
「二日ぶりか?」
「いいえ。三日ぶりです」
「そうだったか? 忙しくて日にちの感覚がずれているらしい」
スマートフォン越しの速水副社長がクスクスと笑う。
「お仕事忙しそうですね」
「まあな。それで蘭の調子だが……」
速水副社長が連絡してくるのは私と話したいのではなく、お姉ちゃんの様子が知りたいから。
速水副社長、いつになったらお姉ちゃんのことを忘れるんだろう……。
釈然としない気持ちを抱えつつも、渋々と口を開いた。
「お姉ちゃん、食欲ないみたいです」
「そうか……」
「はい。私の食欲を分けてあげたいくらいです」
十月に入り、清々しい日々が続くと口にするものすべてがおいしく感じる。梨にブドウ、もう少し秋が深まれば柿にさつまいもにサンマだって旬になる。頭の中でおいしそうな食材を思い浮かべていると、速水副社長が大きな声をあげて笑った。
「あははは」
「そんなにおかしいですか?」
「ああ、これから食欲の秋を迎えるしな。しかし、これでまたデブ確定だな」
容赦ない速水副社長の言葉が悔しい。