恋は理屈じゃない
「そんなこと関係ないよ。私と都合が合わないのは嘘じゃないし、副社長と遊園地に行きたいって、お願いしてみな?」
「でも、副社長は忙しい人だし……」
口ではそう言いつつも、速水副社長と一緒にジェットコースターに乗っている自分の姿を想像してしまう。
速水副社長と一緒に遊園地に行けたら、楽しいだろうな……。
能天気にそんなことを考えていると、目の前の琴美が小さく笑った。
「ねえ鞠花。今、副社長のこと考えていたでしょ?」
「えっ? どうしてわかったの?」
「鞠花って単純ですぐ顔に出るから」
「……」
たしか速水副社長にも、単純って言われたことがあったな……。
でも、どこがどんな風に単純なのか自分ではよくわからない。
なにも言い返せずにいると、琴美は大きな口を開けてエビの生春巻きを頬張った。そして納得したように何度もうなずく。
「そっか。鞠花は副社長のことが好きなのか……」
えっ? 私が? 速水副社長を? 好き?
「琴美……なに言ってるの?」
意味がわからずにポカンとしていると、琴美が大きな声をあげる。
「なにって……鞠花、無自覚なわけ?」
「無自覚?」
琴美はチチをひと口味わうと、私を諭すようにゆっくりと話し始めた。