恋は理屈じゃない
散々悩んで決めたコーディネートを否定されて気分が落ち込み、足を止めるとうつむく。
「あ、すまない。別に似合わないと言っているわけじゃないんだ。鞠花ちゃんがオシャレをしてきてくれたことはうれしいし、かわいいと思う。ただ……」
「ただ?」
顔を上げると、髪の毛を掻きあげる速水副社長の姿が目に映った。
「ただ……うまく説明できないが……鞠花ちゃんの素肌をほかの男に見せたくないというか……。あ、もちろん保護者的な意味でだが……って、俺なに言ってんだ? 悪い、今のは聞かなかったことにしてくれ」
速水副社長は耳たぶを微かに赤くして、しどろもどろに言い訳をする。どことなく独占欲を感じさせる彼の言葉は、うれしくもあり、恥ずかしくもあった。
でも、保護者的な意味でって……。
ひとりの女性として見られていないことがわかり、ガックリと肩を落とす。それでも速水副社長の新たな一面を垣間見ることができて、落ち込んでいた気分もすぐに直った。
「副社長、遊園地に来たからには楽しみましょう」
遊園地の閉園は午後八時三十分。わずかな時間を思い切り楽しまなくちゃ、絶対に損だ。
「そうだな。鞠花ちゃんはなにに乗りたい?」
「そうですね……やっぱりアレかな」
レールがぐるりと一回転しているジェットコースターを指さす。