恋は理屈じゃない
「やっぱり遊園地に来たからには、アレに乗るよな……」
「はい。遊園地に来たからには、アレに乗りましょう」
「……」
久しぶりに乗る絶叫マシーンを前に、胸がわくわくと躍り出す。
「副社長、早く行きましょう!」
手を伸ばすと速水副社長の腕を勢いよく掴んだ。
「わかったから、そんなに急かすな」
なんだか、すごく楽しい。
上機嫌で速水副社長の腕を引っ張りながら、ジェットコースター乗り場に向かった。その数分後……。
ジェットコースターから降りた速水副社長は、フラフラとベンチに向かうと力なく腰を下ろす。
「副社長、大丈夫ですか?」
「……大丈夫だ」
口ではそう言いつつも速水副社長の顔色は悪くて、ちっとも大丈夫そうには見えなかった。ぐったりとしている彼の隣に座る。
「ジェットコースターは苦手だって、素直に言ってくれればよかったのに……」
「ジェットコースターは苦手じゃない」
速水副社長はベンチの背もたれに寄りかかっていた背中を伸ばすと、即座に否定した。
絶対に強がっている……。
「じゃあ副社長、もう一度コレに乗りましょう?」
ついさっき降りたばかりのジェットコースターを指さすと、速水副社長の口から大きなため息がこぼれ落ちた。
「……悪い。勘弁してくれ」
速水副社長は吐き捨てるようにそう言うと、またベンチの背もたれに寄りかかった。