恋は理屈じゃない
失恋の忘れ方
窓際の席でハンバーガーを食べていると、速水副社長の動きが止まる。
やっぱり舌が肥えている速水副社長には、おいしくなかったのかも……。
向かいの席に座っている速水副社長の様子をうかがうと、唐突に話が始まった。
「俺が初めて遊園地に来たのは、小学一年生の時だ。クラスの隣の席のマミちゃんに家族で遊園地に行ったと自慢されたのが悔しくてな。早速親に遊園地に連れて行ってくれとせがんだ。でもグランディオグループの社長である父親は日曜日も関係なく忙しい人だから、なかなか遊園地に連れて行ってもらえなかった。そんな俺を不憫に思ったんだろうな。当時の父親の第二秘書の佐藤さんが、ある日俺を遊園地に連れて行ってくれたんだ」
「そ、そうですか……」
過去の出来事を語り出した速水副社長に驚きつつも、耳を傾ける。
「しかしメリーゴーランドに乗ってもちっとも楽しくなかったし、佐藤さんと一緒にハンバーガーを食べても、ちっともうまくなかったんだ。だけど今日、鞠花ちゃんと遊園地に来てみたらとても楽しいし、ハンバーガーもうまい。何故だろうな……」
速水副社長はそう言うと、またハンバーガーを食べ始めた。
少しだけ悲しい速水副社長の思い出を聞き、胸がチクリと痛む。