恋は理屈じゃない

「小学一年生の副社長が秘書の佐藤さんとじゃなくて、ご両親と一緒に遊園地に来たなら、きっとメリーゴーランドも楽しかったと思うし、ハンバーガーもおいしかったはずですよ」

「そうか?」

重要なのは、同じ時を過ごす相手次第。

「はい。だから今日、副社長が遊園地を楽しいと思うのも、ハンバーガーをおいしいと感じるのも、それは遊園地を楽しんでいる私と一緒だからです。きっと私の楽しいオーラが副社長に伝線(うつ)ったんだと思いますよ」

自信満々の私の様子を見た速水副社長が、大きな口を開けて笑い出す。

「あははは。そうかもしれないな。その様子だと元カレのことは吹っ切れたようだな」

「はい。おかげさまで。副社長は……お姉ちゃんのことがまだ忘れられない?」

今まで意図的に避けてきた話題に触れると、速水副社長はハンバーガーの最後のひと口を頬張り、その包み紙をクシャッと丸めた。

「鞠花ちゃん、聞いてもいいか?」

「はい」

「失恋を忘れるには、どうしたらいいんだ?」

速水副社長は真剣な眼差しを私に向ける。

きっと速水副社長はまだ、お姉ちゃんのことが好き……。でも少しだけ前に進もうとしている。

そんな速水副社長に伝えられることは、一足先に失恋から立ち直った私の経験談だ。

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