ザ・ゲージ
タイトル未編集

あの日、確かに君は、そう言った。どちらかを選ぶと。
選んだ結果が、その状態だ。

そう、君は確かに達成したんだよ。


映画館で、僕は、そう呟いた。


仕事帰りに、映画館に行くと比較的すいていた。僕は、一番後ろの席に座る。本編が始まる直前まで今日、1日を思い返していた。午前中は晴れていたのに午後からは雨になり、夜は曇りだった。僕は、ため息をつく。

映画が始まった。

映画が終わると館内が明るくなった。僕は、映画館を出る。真っ直ぐに近くのファミレスに行く。ファミレスを出ると本屋に。

本屋を出ると銭湯に。

銭湯を出ると、また別の本屋に行く。そして、自宅へと戻った。そして、寝る。

朝、起きると枕元に読みかけの文庫があった。それを閉じて朝御飯を食べて会社に行く。

会社から帰ると体重計にのる。そして、お酒を飲んで寝る。

朝、起きるとハンガーにかけられたグレーのジャケットが目に入る。僕は、それを着ようとしたが、その前に朝御飯を、ゆっくり食べる。そうすると、仕事に行く時間になり、とりあえず帰ってきたら、着てみようと思い、玄関を出る。

仕事、帰りに映画館に行く。映画を見終えて映画館を出た。

映画館のスタッフが、そんな僕を見ていた気がするが、気にせず僕は、自宅へと帰路を急ぐ。

スタッフA
「あの人、何回、同じ映画を見るのかな?」

スタッフB
「俺、あの人、一週間前にグレーのジャケットを着て観に来てるのを見たよ」

スタッフA
「袖を捲ってだろ、俺も見たよ。俺は長年、この映画館に勤めているから、お前は知らないだろうが、あの人は喜劇には必ず、あのグレーのジャケットで観に行るんだよ」

スタッフB
「悲劇には、どんな格好で来たのを見た?」

スタッフA
「服装は、覚えていないけど、何かサンダルを履いてて、連れがいたよ。悲劇には、だいたい連れがいて、その連れは、何故か男性なんだよ」

スタッフB
「たぶん、それは、あまりにも悲しい結末だった時に立ち上がれなくくらいの状態になり、おぶってもらうためだろう」

スタッフ達の会話は続く。

ところ変わって、自宅に着いた、僕。グレーのジャケットを着てみる。

「大分、来たよな。来週までクリーニングに出さないと」

(終)


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