クラッカーにはご用心
「なんや、見たことある顔やと思おたら、朽霊会の赤根楮筬組長さんやんか。こんなとこで会うとは奇遇やね。」



乱れた服を整えながら先程とはうって変わり、大阪弁で挑発的に喋る女―――飴魏蜜穿(アメギ ミツバ)は、関東を中心に勢力を拡大中の暴力団廓念(クルネ)会に属する裏社会の有名人である。



「廓念会って朽霊会と因縁の…」


「目障り極まりないけど、この女だけは別格や。ハニービーって知っとるか?」


「知っとるもなにも、ネットの世界では有名ですやん。企業から情報盗んでは悪巧みを公表したり、悪い奴から慈善団体へ金を横流ししたりする天才ハッカーやろ。義賊やゆーてマスコミも盛り上がっとるあの。」


「そのハニービーが、この女や。」



「え?ほんまに…?……って、いやいやいや。こーぞーさん、担いだらあかんで?こんな女がハニービーなわけないやろ!俺は騙されへんで!」



ハニービーがメディアなどへ話題がのぼるようになったのは、ネットが普及し出した20年ぐらい前から。


目の前の蜜穿はどうみても自分と同じ年代で、ハニービーの活動開始時期においては小学生になってしまう。



涓畤壟はあり得ないと笑う。
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