クラッカーにはご用心
「兄ちゃん、思い込みと決め付けで判断してもそんなんは事実やない。闇に堕ちた漆黒の天使、光を導く純白の悪魔、狂気と赤に染まる神慈悲深い優しき死神。見た目と中身が同じやとは限らん。油断しとったら痛い目みんで。」



涓畤壟を嘲笑うかの如く、かなり上から目線だ。



「それに、うちはハッカーやない。クラッカーや。間違えんといて。ちゅーか、よう分かったな、うちがハニービーやて。会合にはあんま出てへんのに。」


「チラっと見たことあったしな。それに部下から電話があったんや。肥渓のとこにガサ入ったんにブツが出てきよらんかったってな。ほんでお前さんが来た。そのキャリーバックに入っとんのやろ。持ち出したブツが。」



東京に店を構える鏨畏(タガネイ)建設、社長の肥渓邯滄(ヒタニ カンゾウ)は廓念会に属する組長の一人だ。


同じ組長同士で知り合いだが、会同士も仲が悪くいつもお互いに動向を探り合っている。



「そのキャリーバック、改めてさせてもらう。」


「はあ?あんた何なん?」



「西広警察署のお巡りさんや。」


「警察………、あ。」



警察と聞いて力が緩んだのか、キャリーバックを奪われてしまう。
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