クラッカーにはご用心
それから数週間後。



「きゅーさんからお金を盗んだ黒兵衞、捕まったそうやね。」



お皿を拭きながら剣は、さっき帰ったお客達が話していた内容を涓畤壟に確かめる。



「そうなんよ、ことりちゃんが捕まえたんやと。こーぞーさんが睨んだ通り、ネット見て真似したど素人やって。」


「ネット見ただけで真似出来るやなんて凄いねー」



碑鉈は感心するが、犯罪行為なのだから、感心することではない。



「今時珍しないよ。オレオレ詐欺とかあげます詐欺とか、めっちゃ種類あんねんから。ひなちゃんも気を付けや。」


「かっきー、お前も一種の詐欺やろ。」


「うっさい、舎弟の分際で!ちゅーか、なんで今日は、かしゅー様も蜜穿様もおらんの!」



鰍掩と蜜穿を様付けし、涓畤壟にかっきーと呼ばれた女―――塘測柿蒲(トウハカ シホ)は、鰍掩御用達のハッカーだ。


蜜穿とは違い本来の意味でのハッカーだが、クラッカーとしての蜜穿をリスペクトする少し変わった女である。



「蜜穿ちゃんは分からんけど、かしゅーさんは仕事やって。もうじき帰って来るんとちゃうかな。それまでこれ食べとき。」



剣はミックスサンドを差し出した。
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