クラッカーにはご用心
「いやいや、でも、雑誌にも……テレビかて…」


「兄ちゃん、前にもゆうたやろ。根拠も無い言葉に惑わされて右往左往せーへんことや。気付いた時にはもう遅い。気付かんままやったら、なんもかんもに疑心暗鬼になってしもーて、感情の渦は底なしの闇へ堕ちていくで。」



騒ぐ涓畤壟に対して、呆れたように静かに諭すように蜜穿は言う。


一体何歳なのかと疑いたくなる重い言葉だが。



「えらい耳の痛い言葉で。」



「そういう奴を何人も見てきたからな。言葉だけはいっちょ前に出てくるわ。」



裏社会だけやないけど。



そんな言葉は、鰍掩達に届くことなく消える。



「まぁ、警察もマスコミや兄ちゃんと同じ考えやったみたいや。」


「警察?」


「あのお巡りさんが、あんたらだけやなくてうちも逮捕するゆうて、かなり意気込んでたらしいてな。名前がちゃう課まで届いて呼び出されたんや。」


「じゃ今まで警察に?それは大変やったね。はい、コーヒーとこれオマケや。」



出来立てのタマゴサンドを頂きながら思い出した。



殊犂とは違う目をした、サイバー犯罪対策課の捜査員―――牟齧荊蜻(ムカジ ケイセイ)のことを。
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