クラッカーにはご用心
「なんでそんなことするわけ?」


「特に理由なんてないけど。」



私腹を肥やす為でも感謝される為でもない。


ただ、悪人が贅沢するよりはいいと思っただけだ。



「理由がない……?ふざけないで!恵んでくれって誰が言った!施設だからって、憐れまれたって惨めなだけなの!」



栲袴は叫ぶ。


自分が下にみられているようで、蔑まれているようで。



「まぁいいわ。言い訳なんていらない。二度と視界に入らないように消えて欲しいの。」



言葉でなく態度で示せと、そういっているように栲袴の手には鈍く光るモノが。



「なるほど。うちはまんまと、あんたの罠に嵌まったちゅーわけか。」


「義賊とか天才とか良い風に言われてるみたいだけど、私は大嫌いなのよ。」



かなりの恨みなのだろう、迷い無く真っ直ぐに凶器は向けられる。



「眩しいなぁ。眩しいて眩しいて、見えへんぐらいどす黒い闇や。無理矢理生きたいとは思おとらんからええけど。」



死ぬんはええねんけど。



カン…カランッ……―――



「っ!!」



蜜穿は言いながら、栲袴の手からナイフを払い落とし、自ら己の首元へとその刃先を向けた。
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