クラッカーにはご用心
「何の真似…?」


「別に、恵んどるつもりも憐れんどるつもりもなかったんやけど。命を差し出すぐらいの覚悟はあるさかいにな。」



寄付は廓念会の指示ではなく、蜜穿の個人的な行為だ。



組織の人間からは、影響が無い企業の為咎められてはいないし、寧ろ裏社会での価値が上がると好意的な評価。


始めたのは、アイツ等なんかに使われるよりはと思ったからだ。



「あんたみたいな人に犯罪は似合わん。やから、うちごと闇に葬ればええ。」



犯人を逮捕も公表も出来ない真実ならば憎しみの光で塗り固めて偽物の闇で覆い隠して。


醜い秘密を鈍い痛みで封じて原因の自分ごと存在を消し去って。


燃え盛る復讐の矛先を無くしてしまえばいい。



「今回はこっちの都合もあったからな。あんたのやった事は罪には問われへんよーにしとるさかい。」



「それどういう意味…?」



「あやつのドラマチックな妄想でも、あんたが語ったバッドエンドでも、うちがやろうとしとるリセットでもあれへん。明るみになるんは、最低な奴が最低な事をしたという事実だけや。」



見るだけの夢に喰われんようにな。



蜜穿は頸動脈へと凶器を動かした。
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