クラッカーにはご用心
「あんたの行動が想定外やゆーとんねん。」


「あ?犯罪者を逮捕することの何が想定外なんだ。警察官として当たり前のことだろう。」



課が違うのはこの際置いておいて、確かに殊犂の言う通りである。



「じゃ、うちを逮捕出来んようになるさかいに、そないな暴挙に出たんか?」


「暴挙というほどでもないだろう。……これは…単に手が出ただけだ。」



あの時の行動も言葉にしても、己の信念に従っただけ。


そこに蜜穿に対しての深い意味など特に無かったはずだと、殊犂は心の中で言い訳をする。



「ほんまに、あんたは単純やな。」


「なんだと?!飴魏蜜穿!大体貴様、さっきから失礼なことばかり」



「ありがとう。」


「!」



悪態を付き続ける蜜穿に文句のひとつでも言おうとしたのに、突然お礼を言われ殊犂は戸惑う。



「あないな風に助けてもろーたことなかったさかい。ありがとうな、お巡りさん。」



利害関係だけの裏社会において、純粋に守られることなどない。


だから蜜穿は嬉しかった。



「じゃあ、うち帰るわ。」



そう言うと蜜穿は帰路に着いた。


呆然としたままの殊犂を置き去りにして。
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