クラッカーにはご用心
ピンポン………―――



ピンポン、ピンポン……―――




ピンポンピンポンピンポンッ!!



「あれ?おれへんのやろか?」


「鳴らしすぎや。…バイトでも………!」



2階建ての古いアパート。


チャイムの音が外まで聞こえるほどの薄い壁のようで、近隣に迷惑だと涓畤壟を注意する。


しかし。



「みーつーばー!」



「しっ!」


「兄貴?」



小学生みたいな呼び掛けをする涓畤壟を、険しい表情で鰍掩は制止する。



「大家に鍵、貰って来い。」



「え、鍵?」


「ええから!」



「は、はい…!」



鰍掩の気迫に押され、涓畤壟は訳が分からないままも大家の元へ駆け出す。



「……………。」



水道メーターは動いて、中から水が落ちる音もしているのに。


蜜穿が動いている様子が感じられなくて。



「兄貴、鍵!」


「蜜穿!………!」



急いで玄関のドアを開けると、キッチンの横に蜜穿が倒れていた。



「み、蜜穿!?どないしたんや!……兄貴、凄い熱!」


「けんしろー、救急車!救急車や!」



涓畤壟が駆け寄るも、蜜穿の意識は無くグッタリしている。
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