クラッカーにはご用心
「………渡した、だけだ。」



そう、渡した『だけ』だ。


その他には何もしていない。



だが、それすらしなかった鰍掩から考えると、褒めるべき行動といえる。



「ちょー待ちぃーて!!」



ガラッ………―――



「……!………えらい、大勢やな。」



涓畤壟の制止も聞かず、蜜穿は3人を一瞥し、病室を出ていこうとする。



「何してんねん、しばらく入院や。ベッドに戻らんかいな。」


「病院……は、嫌い、や。」



「顔面蒼白で、何をガキみたいなことゆーとんねん。」



歩くのもやっとのようで、扉にしがみつくように立って今にも崩れ落ちそうな蜜穿を、楮筬と鰍掩は支えるついでにベッドへ戻そうとする。



「なんや、みつばち。携帯出ーへん思おたら、こんなとこで油売っとたんかいな。」


「誰や?」



「ほぉー……、朽霊会の赤根楮筬に、絆栄商事の隗赫鰍掩……豪華な顔ぶれやなぁ。」



「誰や、聞いとんねん。」



ニタリと笑う男は、自分達の素性を詳しく知っているようで鰍掩は不気味に感じた。



「確かおんどれ、廓念会の黄縁叡執……とかゆうたな。」


「ご存知とは光栄なこっちゃ。」
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