クラッカーにはご用心
「ごほごほ…ごほごほごほ……」



魅園へ行った帰り道、早く帰らなければ叡執の逆鱗に触れると思いつつも足が向いたのは妃翠だった。


見つかっては面倒なので遠目からだが、変わらぬ雰囲気にホッとする。



「飴魏蜜穿……!!」


「お巡り、さん…」



物凄く驚いた顔の殊犂がいた。



「貴様、今までどこで何をしていた?体調は?この痣はどうした?携帯も部屋も解約したらしいが、どこに住んでるんだ?黄縁叡執といったな。あの男と一緒なのか?」


「そない、いっぺんに言われても……げほげほ…、答え、られんわ…」



蜜穿を見付けた興奮のあまり、矢継ぎ早に質問をしてしまった殊犂。


しかし、今の状態の蜜穿の思考回路にそんな処理能力はなかった。



「咳が出ているじゃないか。病院に早く」


「あんた、うちを探してたようやけど、もうやめ。…ごほごほ、ごほ………。今会えたんやさかい、これで終わりにしとき。」



裏の人間である楮筬や朽霊会はともかく、これ以上表の人間である殊犂が動くと叡執が消しにかかるかもしれない。


踏み込んではいけないと蜜穿自身が線引きする、表の世界をも叡執なら巻き込みかねないのだ。
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