クラッカーにはご用心
「ああ、終わりにするさ。もう探さなくていいからな。早く病院に行くぞ。」


「……やから、病院は」



「何やってるんや、みつばち!」



2人が揉めていると、用が終わったのだろうか叡執が通りかかる。



「黄縁叡執…!」


「ことり、ちゃんか。お前に用はないんや。」



「貴様に呼ばれる筋合いは」


「みつばち。」



「おい、人の話を聞け!貴様、ちゃんと病院に行かせてないだろ。」


「あ?なんで俺が病院に行かせる必要があるんや?行きたかったら自分で行くやろ。」



叡執の言うことは最もだが、救急車で運ばれなければならないほど放置し途中退院する蜜穿が、自ら行くとは到底思えない。



「そういう問題ではない!貴様本当に…!」


「やるんなら、殺ってもええけど?」



無関心で挑発的な叡執の言い種に我慢ならないのか、怒りに任せ殊犂は胸ぐらを掴む。



しかし。



「っ!!」



叡執を守るように殊犂の手を振りほどいたのは、蜜穿だった。



「みつばちは俺のモンや。」



所有物と言わんばかりの言葉を吐いて、叡執は蜜穿を車に押し込んで去って行った。


立ち尽くす殊犂を残して。
< 70 / 122 >

この作品をシェア

pagetop