クラッカーにはご用心
「みつばち、お前よう俺をコケにしてくれたな?」


「し、してな…がはっ」



部屋に着いた途端、床に投げつけられ一発蹴られた。



「がほ、げほげほ…げほげほ……」


「お前の主は誰や?!この俺やろ!!お前は俺のモンや!」



殊犂と会ったことで、叡執の嫉妬心がフラッシュオーバー現象のように爆発する。


咳き込む蜜穿など構わず、力の限り殴って蹴って。



「は……か、は……はぁ…」



何十分………いや、何時間経っただろうか。


とりあえず治まったのか、叡執の動きが止まる。



「みつばち、脱げ。」


「……脱げ、って…」



自分のアパートの部屋より何十倍もある叡執のマンションの部屋。


部屋に違わず大きなソファーに座り、叡執は唐突に言った。



「お前が誰のモンなんか、分かっとらんようやからな。身体に覚えさすんが一番や。たっぷり刻み込んだるわ。」



見晴らしがいいベランダのガラス窓は大きく、まだ陽も高い。


しかし。



「みつばち。」


「……分か、りまし、た…。」



言葉も切れ切れに服に手をかける蜜穿には、この男に対しての拒否権など、いつだって存在しなかった。
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