クラッカーにはご用心
「飴魏、蜜穿…?飴魏蜜穿!!」



「っ………!」



心地好い声に名を呼ばれたから、蜜穿はとりあえず目を開けてみた。



「お、ま、わり、さ…」


「貴様こんなところで何を……。とにかく、来い!」



息も絶え絶えな蜜穿の腕を掴み、殊犂は無理矢理立たせる。


とにかく、蜜穿をこの場から連れ去りたくて。



「な、んや……、あんた、…うちん、こと…探、す…、は……や、め、ゆ…た、や、ろ…」


「今、そんなことはどうでもいいだろう……!とにかく来い!」



蜜穿に何があったかは知らない。


裏の闇は、知ることすら出来なくて。



言えないことも、言いたくないことも、言わなくていいから。


分かりやすく嘘を付いても構わないから。



だから。



「そんな状態で、我慢だけはするな。」


「…………………。」



薄くしか開かない目で、今までで最も近くに殊犂を見る。




ジャストロー錯視のように同じなのに、


殊犂と叡執の対応はダイラタンシーのようで。



この温かさにいつの間にやら、


自分の置かなければならない状況が、


ゲシュタルト崩壊を起こしているかのようだった。
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