クラッカーにはご用心
「ほら、着いたぞ。」



フワフワとした意識のまま、寝かされたのはこれまたフワフワなベッド。



「少しでも何か……、探してくるから待ってろ。」



ここは、マンションの一室。


きっと殊犂の部屋らしいと蜜穿は思った。



何故なら。



「(おまわりさんの匂いや………)」



ベッドからも部屋からも、殊犂の匂いしかしなかったからだ。



「………―――――」



息をする度に、今まで感じたことがない安心感に包まれて。


蜜穿の意識は次第に………――――



「とりあえず、水でも……っ!」



食べ物より飲み物の方がいいかと思い水を汲んでくるが、蜜穿はスヤスヤと眠っていた。





誰かを失うことに怖がって逃げ出したとしても、


誰かの幸せに怯えて手を振り振り払われても、


探して掴まえに行けばいい。



何度、自分の未来に臆病になって闇に迷っても


俺の為にそうするなら、俺がそうすればいいそれだけだ。



原因も解決法も『蜜穿』にとって『殊犂』ならば。




穏やかな寝息をたて無防備な寝顔に、殊犂はそう思った。



「おやすみ…」



いや、誓ったのかもしれない……
< 75 / 122 >

この作品をシェア

pagetop