ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
暫くすると僕はお尻が痛くなり、たまらず一度立ち上がり背伸びをした。

その目線の先には蕾がほんのり膨らんでいる1本の桜の木。

「もうすぐ、咲くかなぁ」

そんな僕を見て詩織は呟く。

「うん、きっともうすぐだよ」

振り向いた僕は詩織の笑顔がさっきよりも薄暗くなっていることに気づく。

いつの間にか日が暮れかけていた。楽しい時間ほど、瞬く間に過ぎてゆく。

時間を忘れるほど、お尻が平らになるほど喋り続けてもまだまだ足りないくらいだった。

もっと、一緒にいたい。

そんな気持ちがより一層僕をお喋りにさせている。夢中になりすぎて一方的な会話になっていなかったらいいけれど。

「っくしゅ」

陽が落ちるとまだ肌寒く感じる季節だ。

詩織もシャツ一枚、僕も残念ながらクシャミをした詩織に貸してあげられる上着を持っていなかった。

「寒くなってきたから、帰ろうか」

せっかくの楽しい時間、風邪なんかひいたら台無しだ。

「ん……？まだ大丈夫だよ」

腕時計を見た詩織が言う。詩織もまだ僕と話したいと思ってくれているのかな、どこか寂しげな表情に見える。

瞬きをする度に色を変える景色が気持ちを切なくさせる。
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