ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「どこから来たの?」

どこからともなく現れて当たり前のように横に座り、話しかけてくる。そんなハルのことをもう少し知りたくなり質問を続ける。

「ん?ああ。あっち」

私の住む南森町とは反対の、北森町の方を指差した。

隣りの町だけど、この辺りで一番大きな駅とは反対方向にあって、私はあまり行ったことがなくこれといった印象もない町だった。

「そっか。私はあっちの南森町」

ハルが差した方向とは反対側を指差すと、自然と私の住む町の方向に目をやる。

きっと彼にとっても、ただいつも通り過ぎる小さな隣町くらいの印象しかないだろう、そう思っていたのに。

「そう!僕はあの町のフクロウってカフェにもよく行くし、エラーブルってパン屋のクロワッサンが大好きだよ」

「メイプルシロップのかかった?」

「そう、それ!ああ、久しぶりに食べたくなっちゃったな」

お気に入りのカフェが一緒だったこと、好物のパンが同じだったことよりも、子供のようにはしゃいだ声を出すハルに、私は少し驚いた。

落ち着いているというか物静かな印象しかなかった彼の、意外な一面を見れた、そんな気がした。
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