ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
この喫茶店で僕たちはお互いの家族の話をした。

詩織は一人っ子でおばあちゃんと一緒に暮らしている。お父さんは少し厳しいけれど、暖かい家庭で大切に育てられたから今の詩織は明るくて気取らない性格なのだろうと伺える。

「ここにも、家族でよく来るの?」

詩織は薄暗い店内を物色するように見渡す。

「いや、ここには1人で来ることが多いかな」
「ふーん」

喫茶店に1人で来るなんて気取ってると思われないだろうか。

「いいね、なんか落ち着く」

そう言ってミルクティのカップに口をつける詩織。メニューを見ながら、次来た時にはこのケーキも頼もうかな、なんて呟いている。

そんな些細な一言に僕はいちいち反応してしまう。

次は……次に詩織がこの店に来る時も、僕は一緒にいるだろうか。そんなことを考えてしまう僕はやっぱり女々しいのだろうか。

「春太くんは、甘い物好き?」

「ああ、うん。好きだよ」

「よかった!じゃ次はここのケーキを食べに来ようよ」

「うん、いいね。そうしよう」

よかった。詩織はまた僕と一緒に来るつもりでいてくれたんだ。

恋って、こんなに忙しなく気持ちが揺れ動くものだったかな。
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