ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
プロポーズの時期が早いのか遅いのか、僕にはそのタイミングが分からなかった。

お互い仕事は3年目を迎えようとしているまだまだひよっ子だ。そう考えると早い気もするが、付き合っている年月を考えると長く感じるから、もしかしたら詩織を待たせてしまっているのかもしれない。

考えれば考えるほど頭が混乱してしまい、結婚はタイミングなんて言葉を信じて、僕はなんとか結論を出した。

プロポーズの場所は、もちろんあのユキヤナギの丘。

さすがに今はあの丘へ行くことも減ってしまったが、花が満開のこの時期には必ず訪れているから彼女に不審がられることもないはずだ。

待ち合わせは2人の仕事終わりに合わせた夕方6時。もう外は薄暗くなり、街灯の灯りだけがユキヤナギを照らすだろう。それはそれで幻想的でロマンチックだと思うんだ。

僕も詩織もそれほど記念日にこだわるタイプではないが、人生に1度の大イベントくらいいいんじゃないかな。

指輪だってちゃんと用意した。

給料3ヶ月分とまではいかなかったが、ユキヤナギに似た花がモチーフの小さな石を埋め込んだ華奢なデザインのそれは、きっと詩織に似合うはずだ。
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