ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「わーッ‼︎」

少し下り坂になっている道を、ブレーキをかけずににスピードを上げる。大きな声と一緒にモヤモヤも吐き出す。

犬の散歩中だったおじさんが振り向いたけれど、そんなの気にしない。

信号待ちの交差点、昨夜ハルと傘を買ったコンビニ。その時のハルの様子を思い出すと胸がギュッとなる。

この変な胸騒ぎはきっと、ハルのせいだ。ハルが私を引き止めたり、何度も切ない表情を見せるからだ。

ハルが何を感じ何を思っているのかは分からないけれど、きっとこれから一緒にいることで少しずつその心の湿った部分を、暖めてあげることができるんじゃないか。

私のことを素直だと言ってくれたハルは、きっと私の胸のささくれた小さな傷をかばってくれる。

運命、なんて大袈裟なことは言わないけれど、あの日あの丘で私たちが出逢ったことには何か意味がある、そう感じていた。

一歩一歩、踏みしめながらユキヤナギの咲く丘へと続く階段を登って行く。


ハルーー


そこに、ハルの姿はなかった。
< 138 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop