ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
まだ、来てないのかな。

下の広場からは子供たちの声も聞こえてこない。なんだかいつもより静かな気がして心許ない。

「よし、待つぞ」

なんだかよく分からない気合いを入れて、私はいつものようにユキヤナギの前に腰を下ろした。

真っ白な花の間には緑の葉がところどころ見えていて、この花の季節の終わりが遠くないことが分かる。

ああ今年も、この季節が終わってしまうな。

イヤホンを取り出し音楽を聴く。少しでも元気を出そうとポップな曲を選んでみたが、この場所にはやはり優しい曲が似合う。

目を閉じ風を感じながら、ハルを待つ。

耳から入ってくる優しい音楽と心地よい風に、だんだんと気持ちも落ち着いてくる。

ああやっぱり私はこの場所が、好きだ。

同じように好きだと言っていたハルと、これからもここで一緒に季節を感じながら過ごしたい。

ここは、私のお気に入りの場所。そう思っていたけれど、今は違う。

私と、ハルのーー。
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