ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「ご苦労さまでーす」

配達人に負けず劣らず間の抜けた声を出し、お父さん宛ての荷物を受け取る。

また通販で何か買ったんだな。どうせいつものようにお母さんに叱られるんだろう。

それでも一瞬だけ外の空気に触れたことで私の頭中のグルグルは彷徨うのをやめ、ある方向を目指し始めていた。

もう一度冷蔵庫を開け、炭酸水を取り出してグラスに注ぐ。

ピチピチと音を立て泡の立つそれを何口か喉に流し込む。飽和状態の私の頭の中は、炭酸の泡が弾けるように徐々にスッキリとする。

「っしゃー‼︎」

大きな声を出すと、気持ちも声も真っ直ぐに伸びてある方向へと向かっていった。


ハルに。

ハルに会いに行こう。


もちろん、会えるとは思っていない。でもここでじっとしていたって何も変わらない。

もし、もう私に会いたくないのなら、それをハルの口からちゃんと聞きたかった。そうじゃないと私の気持ちが整理できない、前へと進めない。

ハルに、会いたい。
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