ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
〜 ♪ 〜♪ 〜

17時半を告げるいつもの音色が辺りに鳴り響く。

「あ、私そろそろ帰らなくちゃ」

そう言って立ち上がり、お尻に付いてるだろう芝生を払う。

「え?もう帰るの?」

寂しげに立ち上がった私を見上げるハル。

「うん、6時までには帰らなくちゃ」

「門限かなにか?」

きっとまだ一緒にいたいと思ってくれてるんだ。

本当は私だってもう少しここにいたい。

そんな私の気持ちを、素直に彼に伝えてあげればいい。分かってはいるんだけれど、言葉には出てこなかった。

「ううん。今日は卒業式だから、おばあちゃん達と食事に行くの」

お母さんから、時間厳守!と散々念を押されたから。

「ああ、そうか。そうだよね……いいな、うたは。いい家族だな」

また遠くを見つめるハル。

「ハルにだって、待ってる家族がいるでしょう?」

当たり前のこと、そう思って言った。

「……うん、まあね」

あれ……?

ほんの一瞬のことだったが、私が帰ると言った時とはまた違う影を帯びたような寂しさを、ハルはまとっていた。
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