ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
桜の花が咲き、もうすぐ満開を迎える春。それとは反対にユキヤナギは花を落とし始め、緑の葉も目立つようになってきた。


一緒に桜見るって約束したのにな。


風に乗ってハラハラと散り落ちる小さな白い花を眺めていると、本当に私とハルとの関係も終わってしまうような気がして胸がギュッと締め付けられる。

そんな行き場のない気持ちを私はどうすることもできずに立ち上がり、大好きなその木に近づく。

まだ散らないで、頑張って。そんな願いを込めてその細い枝を手のひらに乗せる。

小さな花はその枝に必死にしがみついているように見え、その姿は淡く儚い恋を忘れられない私のようだった。


そう。忘れなければならないんだ。


この恋は、もう終わっている。


この花が全て散れば、忘れられるのだろうか。

苦しくて胸は震えているのに、目の前には何かを祝福するかのように咲き誇る桜の枝。

なんだかな……。

なにやってるんだろ、私。
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