ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
ああ、本当にこの2人はこの世に存在していたんだ。

きっと、私とハルのようにここで、並んでユキヤナギの花を眺めていたのだろう。
なぜ、そんな幸せな2人が……。

手紙を缶に戻そうとすると、そこに一枚の写真が入っていることに気づいた。裏に、何か文字が書いてある。

『春太 詩織 ユキヤナギの丘で 1998年5月』

きっとこの写真を裏返せば、そこには幸せそうな笑顔で写る春太と詩織がいるのだろう。

私は軽く息を吐き、手紙と共にその写真も缶の中へと戻した。

今の私にはまだ、この2人の想いまで背負う勇気がなかった。

缶の蓋を閉じて、再び土の中へ。

大丈夫。あなた達の願いは、ちゃんと叶ったから。これからも、2人で幸せに。そう、願いながら。

そして私は、ハルの手紙の中にヘアゴムをしまい、大切にカバンの中へと入れた。ハルとの思い出はここに置いて行くことはできない。

気づけば空は暗く、公園には街灯が灯っているだけだった。


帰ろうーー。
< 168 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop