ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「ただいまー」

「あ、うた帰ってきた」

いつもはお母さんしかいないリビングから今日は賑やかな声が聞こえてくる。

「うた、卒業おめでとう」

おじいちゃんとおばあちゃんは、いつもの優しい笑顔で迎えてくれた。

「いい卒業式だったな」

会社を休んで卒業式に来てくれたお父さんも。

「……うん」

お父さんはいつも、私の目をしっかり見つめて話をする。

中学生の頃はそれがイヤで、父親を避けていた時期があった。

そう、反抗期ってやつだ。

でも今はもう、私の中での反抗期は終わっている。

それなのに今でも父親とうまく話せない、ちゃんと目を見れないのは何故なんだろう。

いつも、何があっても、お父さんは目を逸らしたりはしなかった。

あんなにお父さん子だったのに。

反抗期の時の私にも、今の私にも変わらずまっすぐに接してくれているお父さん。

本当は無理して仕事を休んで私の卒業式を見に来てくれたこと、嬉しく思っているのに。

たったひとこと「ありがとう」が言えない。
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