ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
いつものように制服を脱いでロッカーにしまう。

「あ、うたちゃんお疲れ様」

いつもの店長の笑顔に見送られ

「はーい、お先に失礼します」


いつもと違うのは、自転車に乗って向かう道。家へと曲がる道を今日はまっすぐ進む。

昨日あの丘で、もう一度ハルに会いたいと思った素直な気持ちを心にちゃんとしまって。

時間の約束をしていなかったので、ハルが来ているかどうかは分からない。

それでもこのざわついた胸を落ち着かせるためには、あの場所へ行くしかない。

ハルに会えなくてもユキヤナギが私を迎え入れてくれるはず。

ここからあの公園までは、おそらく15分ほどで到着するだろう。焦る気持ちを抑えながらペダルをこぎ進む。

今日は昨日より暖かく、春らしい爽やかな風が吹いていた。

信号待ちの交差点。無意識にペダルを漕ぐ足に力が入っていたのだろう、暑さを感じてマフラーを外した。

首すじから入ってくる風が気持ちも落ち着かせる。


そして、見えてきたいつもの見慣れた公園。

私は正面の入り口からではなく、人通りの少ない裏手から直接丘の上へと続く階段を使う。

女子高生が1人、子供たちやカップルで賑わう広場を歩いて行くのにはちょっと勇気がいるから。
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