ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる

少し息を切らして階段を登り丘の上へと立ち、深呼吸をして呼吸を整えながらぐるりと周りを見渡しても、そこにハルの姿はなかった。


いないか。


８割ガッカリし２割ホッとする。

そんな自分に戸惑いを感じながらも、満開で迎え入れてくれたユキヤナギに癒されいつものようにその前に膝を抱えて座る。

ここにいることは私にとって苦痛ではないから、時間の許す限りハルを待とうと思う。

だって、会う約束をしたのだから。

日差しの眩しさに目を閉じると春の空気が私を包み込み、心も体も落ち着いてきた。

静かな丘の上とは違い、下の広場からはもう春休みなのか小さな子供たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。

音楽でも聴こうとスマホを取り出しイヤホンを耳に差しこもうとした時、１人の子供の高い声が耳に入る。


「ハル！早く！こっちこっち！」


ハル⁈


慌ててチクチクする芝生に手を付いて立ち上がり下に広がる広場に目をやると、そこには子供たちと一緒に走るハルの姿があった。



ああ、ハルだ。