ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「今日バイトだったんだ」

「ああ、そうなんだ」

ハルはまだ暑いのか、額の汗を小さな青いタオルで拭いている。

ふと目をやるとそのタオルには、タグの所にカタカナで『ユメノ ハル』と書かれていた。

「ゆめの、はる……?」

「ん?ああ、そう。夢野ハル、僕の名前」

「ああ、うん。でもタオルに名前って、幼稚園みたい」

高校生男子の持ち物としてはちょっと違和感があるかな。

「あはは、ほんとだ。パッとつかんできたから……保育園の時のお気に入りだ」

いとおしそうにタオルを見つめるハル。意外と天然なのかもしれない。

「うたは?」

「え?」

私はハルを待たせてしまったことを気にしていたのに、ハルは全然そんな感じではなく昨日と同じ爽やかな笑顔。

「名前、ちゃんと聞いてなかった」

「ああ。私は、浅谷うた」

「あさたに、うた」

「うん」

また、私を見て笑った。

ハルは本当によく笑う。それは、私がここにいてもいいという証だから嬉しくなる。

もしかしたら、昨日ハルが見せた寂しげな表情は気のせいだったのかもしれない。

そうであってほしい。
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