ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
公園から出るとすぐに、私は自転車に乗って来たことを思い出した。

「ハルは、歩き?」

「うん、そう」

ま、ここからパン屋まではそう遠くはないのでいいか、どっちにしてもハルは歩きだし。

そのまま少し早足のハルについていく。

ハルは、通い慣れた通学路を歩くように迷いなく進む。

そうかと思えば初めて来た場所のようにキョロキョロと辺りを見回したりしている。

私は、なんだかなぁと心の中で突っ込みながら、前を行くキレイなブルーのシャツを見つめていた。

「まだ、クロワッサンあるかな?」

無邪気な君が急に振り向くから、ドキッとする。

「うん、たぶん。この時間ならまだ大丈夫だと思うよ」

そんな胸の内には気づかれないように、自然に。

あーお腹すいちゃった、と言うハル。

そうか、昼ごはんも食べずにいつ来るか分からない私を待っていてくれたんだ。ますます申し訳なく思う。

でも、今それを口にして謝るのは違うと思った。

だって、それを気にしているのは私だけだということは、ハルを見ていたら分かる。

きっとまたキョトンとして笑い飛ばされるだけだろう。

もし次の約束ができるならば、今度はちゃんと時間を伝えよう、前を歩く背中を見て思う。
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