ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
ハルはちゃんと近道も知っていたようで、お目当のパン屋にはすぐに到着した。

地元の私が案内するまでもなかったな。

自然な木の壁と、ナチュラルな看板が目を引く。

カランと鳴る入り口から店内へと入ると、焼き立てのパンのいい匂いがした。

2人同時に深呼吸して、身体中をその香りで満たしお互い顔を見合わせてふふっと微笑む。

お目当のクロワッサンはまだ残っていた。私もハルもお腹が空いていたので、ついたくさんのパンをトレイに乗せている。

私はクロワッサンと、ポテトサラダを挟んだフランスパン、そしてつぶあんドーナツを買った。

「買いすぎちゃったかな」

そう言いながらも嬉しそうなハルのトレイには、クロワッサンが2つも並んでいた。

「あはは、そんなに食べられる?」

「こう見えて、けっこう大食いなんだよ」

拗ねた様子でハルは言う。

会計を済ませ、いつも笑顔で優しいレジのお姉さんに挨拶をして店を出た。
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